NUBIC NEWS 2016年2月号巻頭言 産官学連携と地域連携

産官学連携と地域連携

 技術に関する「産官学連携」は古くから推進されています。日本大学では「日本大学産官学連携知財センター(NUBIC)」がその拠点となっています。NUBICは平成10年11月に「日本大学国際産業技術・ビジネス育成センター」として発足し,平成15年7月に現在の名称となりましたので本年11月が18年目となります。現在では,産官学連携・地域貢献の促進,知的財産の創出支援・管理及び技術移転の促進など,研究推進支援と技術移転活動を一体として行う機関として活動しております。

大学の社会貢献と産官学連携

 大学の使命の一つである社会貢献は,社会が必要とする人材の育成と,大学の持つ財産を活用して人々が安心して快適に暮らせる社会を築くことと考えます。そして大学の財産は,研究者を中心とした人的・知的財産および大学の持つ研究インフラであります。知的財産としては研究成果であり,それらの研究成果を導く研究者,あるいはその可能性のある将来の研究者が人的財産といえます。 これらの大学財産を社会に活用するには,大学が産業界および行政と連携する必要があります。

 研究はその成果が人々の生活,社会に役立つもので無ければなりません。

 大学の研究は直ちに製品化されて社会に役立つものは少なく,その多くが基礎的な内容となっています。大学で行う基礎的な研究は,重要な意義を持ちますので実用研究とのバランスを考えた研究活動姿勢が必要でしょう。一方,企業などの産業界,特に生産現場では社会のニーズに合った製品化を行うための開発研究を求めています。そして行政機関では,国家として社会や経済の将来を先導する産業や生産性の改革政策を示し,それに伴う技術開発を大学等の研究機関に求めています。

 このようなことから,人々が安全で快適に暮らせる社会を構築するために産官学,それぞれのニーズとシーズを融合した連携を行い,成果を出す必要があります。NUBICは,それらの連携を支援・調整する役目を担っております。

地域連携,地方創生の動き

 国の動向の一例として,NUBICに関連する事柄を述べます。国は「日本再興戦略」(改訂2015-未来への投資・生産性革命-)を昨年閣議決定しました。これは生産性革命としてイノベーション・ベンチャーの創出,ITや人工知能を活用した産業革命,中堅・中小企業・小規模事業者への成長支援などが施策の一例です。

 そして昨年12月には,総合科学技術・イノベーション会議が合同で第5期科学技術基本計画(答申案)を発表しました。科学技術イノベーション政策を強力に推進するもので,中小・ベンチャー企業の創出支援強化や,知的財産に関しては,中小企業の特許出願割合と大学の特許実施許諾数に目標値が示されています。計画には「超スマート社会(Society5.0)」の実現が掲げられています。この計画と連動して「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)」も出されました。地域を活性化して地方創生の実現を図るべく具体の戦略施策であり,この中には「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」も含まれています。

 これらにおいて地域の産業・経済の活性化のためには,科学技術に関する産官学の連携はもとより,人文・社会を含めた多様な分野の融合連携,加えて地域と地域の連携などの諸施策が示されています。

 大学の社会貢献と産官学連携に思うこと,そして地域連携・地方創生の動向の一部を述べました。

 NUBICが今回のテーマである,地域連携に関して有効な推進支援を実施するために多方面の情報を収集していきます。NUBICの活動を通して,日本大学の総合力「日大力」を活用し,人々が安全で快適に暮らせる社会の構築のために貢献したいと考えています。